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ひなかざり旧岡田家住宅 (兵庫県伊丹市宮ノ前)

2023.03.21(20:03) 1416

冬のいたみに旅兼ねて(2023.2.26)

<コース> JR・阪急共に10分間隔で運転
【JRルート】JR大阪 → JR伊丹 → 徒歩8分 → 旧岡田家住宅
【阪急ルート】梅田 → 塚口 → 阪急伊丹 → 徒歩8分 → 旧岡田家住宅

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旧岡田家住宅(国の重要文化財)

 如月も末の六日、曙の空朧々として、ちと野暮用のために伊丹を訪問。

行先は旧岡田家住宅で、JRからも阪急からもほぼ等距離と駅近く。

10時の開館と同時に用事は無事終了。普通ならそのまま帰宅するところですが、

この時期  令和5年2月4日(土)~3月4日(土)

の期間で「ひなかざり」が無料で開催中。

これは見逃す手はないと、そのまま邸内を見学する事に。

JR西口から阪急へ向かう伊丹酒蔵通りから一本北にある東西の通り、

近代的なビルや住宅街の中にあってタイムスリップしたかのように

旧岡田家・旧石橋家と江戸時代の町屋が並びます。

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通りから見た岡田家全景

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重文・旧岡田家住宅

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伊丹市マンホールカード  同市内では4種目
この日の野暮用はこの入手。

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道路沿いに設置された同じ図柄のマンホール蓋

 旧岡田家住宅は、

『上方から江戸へと酒を運ぶ江戸積酒造業を基幹事業として繁栄した伊丹の実業家。

その邸宅は延宝2年(1674年)の建築。現存するものの中では町屋は県内最古、

酒蔵が国内最古で、国の重要文化財となっている。

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杉玉と看板の下がった入口から屋内へ
暖簾の三つ鱗は家紋?

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店舗に置かれた雛飾り

 明治時代の雛飾りは明治40年(1907年)頃のもので、平成7年に市民より

旧伊丹市立博物館に寄贈されたもの。現在は市立伊丹ミューゼアムが所有。

 最上段には内裏雛が黒塗りの御殿に鎮座し、前には三人官女が並ぶ。

下段には嫁入り道具や台所道具のミニチュアが並ぶが、これは当時の風習と考えられる。

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明治時代の雛飾り

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手前に置かれた生活道具のミニチュア

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最上段に置かれた内裏雛と三人官女

 大正時代の雛飾りは当館の柿衛文庫の所蔵。

最上段に内裏雛・三人官女が並ぶのは明治期と同じだが、

建家は白木の神社拝殿を模した造りと変わっている。加えて下段には、

結婚式に使用する打掛、御付きの女性と思しき立ち姿の人形が置かれている。

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大正時代の雛飾り

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手前に置かれた立ち姿の人形

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最上段の内裏雛と三人官女

 旧岡田家住宅は、正面に店舗、奥に酒蔵、その間に釜屋・洗い場が並んでいる。

建設時期は店舗が江戸前期の延宝2年、酒造は少し遅れて正徳5年(1715年)頃と考えられている。

釜場・洗い場は江戸後期に建てられ、その後大きく改造されて今に至っている。

建立から酒造廃業までの310年間に五次に亘る変遷があり、酒蔵の増築や窯場の増改築等、

様々な改革が行われた。これは醸造技術の改良や酒造規模の拡大が原因と考えられ、

詳細は阪神淡路大震災後の解体修理に伴う建物調査と内部の発掘調査に拠り明らかになってきている。

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これは酒米の洗い場

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洗い場横の井戸
ここからの水で酒造りをするとか。

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洗い場・井戸の解説

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かつての竃
学芸員の方の話では、酒米は炊くと柔らかくなりすぎるので蒸すくらいが丁度良いにだそう。

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釜場・竃の解説

 建立者は江戸前期の酒造家・松屋与兵衛であった事が古文書等から推定される。

蔵の所有は享保14年(1729年)に鹿島屋清右衛門に渡り、明治に入り安藤由松を経て

岡田正造へと渡り、昭和59年(1984年)まで㈱大手柄酒造の北蔵として酒造りが行われて来た。

ここで醸造されていた酒は、江戸時代には松緑(まつみどり)、岡田家の所有となって以後は、

富貴長(ふきちょう)・大手柄(おおてがら)が主要銘柄であった。

 この良質な酒造りの伝統と文化は2020年に『「伊丹諸白」と「灘の生一本」下り酒が生んだ銘醸地、

伊丹と灘五郷』として「日本遺産」に認定されている。』 とあります。

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醪(もろみ)の絞り機

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天上の造り

 昭和の雛人形は自宅も含め何度も目にしていますが、明治・大正期はこのような展示で見るくらい。

雛壇を飾る経済的余裕がなかった家庭が多かったためでしょうが、

その分職人の技術を集めた秀作が多い様にも見えました。

 伊丹の酒造は、戦国武将山中鹿介幸盛の子である新六幸元が大叔父を頼って伊丹の鴻池に逃れ、

この地で清酒醸造を始めた1600年頃まで遡ります。清酒は江戸に運ばれ莫大な利益を得ました。

当時江戸の醸造業はまだ開発途上で、伊丹の酒は上方からの下りものとして絶大な人気を誇ったようです。

反対に下って来ないものは人気がなかった訳でこれが後世 「下らない」 の語を生みます。

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かつて醸造された銘柄を展示
勿論中身は空だろうが…。

 新六幸元の八男善右衛門は大坂に出て酒造りで得た資金を元に両替商に進出、

江戸時代には鴻池家として西日本屈指の大商人に成長します。

鴻池の発展の基礎が酒造りなのは聞いた記憶がありますが、

祖先が尼子十勇士の山中鹿介と言う真偽は如何に?単に伝説と思っていましたが、

学芸員の方の話では信憑性は高いそうです。

中国地方の覇権は毛利氏に奪われましたが、その家臣が西日本の経済圏を牛耳った事で、

尼子氏も以て瞑すべしでしょうか?

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伊丹清酒造りの沿革

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鴻池家の始祖二人

 清酒の製法は戦国末の大和の正暦寺が発祥ですが、その技術者を京の伏見・摂津の伊丹が

引き抜いて江戸時代に発展を遂げます。酒造りに欠かせない水に恵まれた事もありますが、

できた酒を販売する交通網を持った事が大きかったように思います。

その伊丹の発展も後には灘に移る事に。猪名川水系よりも兵庫の港の方が酒の大量輸送に

向いていたからでしょうが、それに伴い当時の杜氏も多くが移った事でしょう。

正暦寺と同じ運命ですが【伊丹】分けと言った所でしょう。

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ミューゼアム2階からの眺望
左手奥が岡田家、手前が石橋家。

 醸造家には文化芸術に造詣が深い人も多いですが、岡田家22代当主・岡田利兵衛は

その代表格。岡田利兵衛は

『国文学者として梅花・聖心で教鞭を採る傍ら、松尾芭蕉研究でも知られ、多くの俳諧資料を蒐集。

岡田家の庭には台柿という見事な柿の樹があったが、その柿を衛るという意味を込めて

柿衛(かきもり)を号とした。

そのコレクションは「柿衛文庫」として隣接する市立伊丹ミューゼアムが所蔵している。

後に伊丹市長、名誉市民にもなった。』 とあります。

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ミューゼアム横の庭園

 資料館の売店で、岡田利兵衛に関する冊子を¥500で購入。

そこには家族写真もありましたが、中には三男の節人(ときんど)氏の学生時代の写真も。

節人氏は発生生物学の泰斗、京大・岡崎基礎生物学研究所を経て文化勲章受章。

私も氏の岩波新書・ブルーバックスの著作や講義でその謦咳に接しました。

生物学者でしたが源氏物語や俳句など文学に関する発言も多かったのは、

この生い立ちを思うと納得です。

尚、節人氏も晩年伊丹名誉市民になったそうで、親子二代に亘る快挙になります。

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購入した岡田利兵衛(柿衛)伝の冊子 ¥500

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伊丹桜ケ丘郵便局 ; 重文・旧岡田家住宅、旧西国街道道標
伊丹船原郵便局 ; 重文・旧岡田家住宅、酒造り風景

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